都内S区に店を構える、比較的新しいメンズエステに行ってみた。
 
　その後同S区内に一部屋、隣のS区にも部屋を増設したようだ。流行っているのだろうか。一部屋じゃ効率が悪いからワンルーム型のメンズエステは二三の部屋を用意するのが常識なのだろうか。それともヤケのやんぱちの無計画な拡大なのか。
 
　どちらにせよ僕には関係ないのだが。この店に訪れることは、もうないのだから。
 

　訪問することを決めたのは、ほんの気まぐれから。
 
　なんとなくムラムラし、なんとなく一つのHPを開き、なんとなく一枚の写真をクリックした。
 
　この嬢への店長コメントが、すごい。美辞麗句のオンパレードなのだ。
 
　唐田某レベルの容姿の女優やアイドルの卵でも入店したのかと思うほどの、賞賛の嵐。胡散臭え～～と思わなくもなかったが、ここまで褒めるなら差し引いて考えても容姿は決して悪くないのだろう。
 
　そして彼女のツイッターもクリック。
 
　むちむちしたエロいボディをしている。Tバック姿の尻の写真を何枚も上げている。－－胸より尻の画像をツイッターに晒している嬢のほうがエロい気がするのは、僕だけだろうか。－－
 
　そんなこんなで興味が湧き、電話だけでもしてみようと思った。すでに埋まっているのなら、後日あらためて予約をしてもいい。容姿が良くてエロい（たぶん）。今日の今日じゃ埋まっている可能性は高いだろう。
 
　と思ったが、あっさり予約成功。
 
 
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　はい、これは嫌な予感がするところです。
 
　なにかがひっかかる。
 
　が、冬の閑散期にさしかかろうという昨今、それもオープンしたばかりのメンズエステだ（純粋な新規開店なのか定かではないが）。暇だとて何らおかしくない。という確証バイアスが発動しかける。
 
　でも、いまだ嫌な予感は消えぬ。冷静になろう。
 
 
　受付女性にオプションの有無を尋ねてみる。すると、
 
 
「コース料金・指名料で90分16,000円ですが、あと4～5,000円余分に持ってきていただけると、より楽しめると思います」
 
 
　うーん、こりゃ苦手なタイプのお店かも。ディープリンパと衣装チェンジがそれぞれ2,000円、ほかにホイップが1,000円ってところだろうか。
 
　「やっぱり今日はやめときます、本当に申し訳ない」と断ろうか一瞬考えたが、Tバック尻の残像が脳裏をよぎる。
 
　90分2万円以上のSEXY系エステには最近あまり行ってないし、たまには新店の自腹レポートもしなきゃな。てなことも考えたけれど、結局はTバック尻の誘惑に負けたのである。
 
 
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　案の定プロフは盛りすぎではあるが、可愛いお顔に綺麗なお肌のむちむちボディという万人受けしそうな容姿の嬢である。
 
　まだ20代前半だろうか。未経験スタートの新人のようだ。
 
　彼女は言う。
 
　「オプションは二つあるんですが付けますか？ ベビードールとディープマッサージです」
 
　「うんまあたぶん」
 
　「ディープは10分単位ですが何分付けますか？」
 
　「じゃあ10分で」
 
　「全部で22,000円です」
 
　追加料金は4～5,000円と訊いていたが、6,000円か。僅かながら訊いていた値段より高いというのは気分が良いものではない。オプションの説明も雑過ぎる。
 
　「6,000円の内訳は？」
 
　「ベビードールが5,000円で、ディープが10分1,000円です」
 
　衣装チェンジが5,000円か。強気だな。そのぶんとんでもなく過激な衣装なのか？
 
 
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　シャワーを終えルーズな紙パンツを履き部屋に戻ると、彼女は透け感のあるベビードール姿になっている。
 
　悪くはないが、他店ではだいたい2,000円ぐらいだよな。よくあるやつなのに高くないか。しかも部屋が薄暗いからよく見えないし。と、肩透かし感を喰らいつつマットにうつ伏せに。
 

　僕の背面に何枚ものバスタオルをかけると、揉みほぐしがはじまる。
 
　「揉みほぐし」と記しが、いくら新人でもここまで力が弱くツボもへったくれもなく、ただただタオル越しに掌を当てている作業を繰り返す嬢も珍しい。
 
　90分2万を超えるメンズエステの多くは、単調な揉みほぐしなんぞはすっとばし序盤から核心に近いセクシーサービスを披露してくるもの。
 
　それなのに、なんという退屈な施術であろうか。あまりに退屈なのでお話しでもしようと思ったけれど、彼女は話すときに完全に手が止まるタイプのため断念。
 

　たっぷり時間をかけ脚の揉みほぐし（もどき）を終えると、腰や尻、背中などへ。ようやく僕の背中に身体を付け、密着。が、タオル越しだし動きもなくじっと身体を当てているだけなので、あまり高揚しない。
 
　それでもあと少しで互いにオイル塗れになり、ネチョネチョグッチョンするに違いない。退屈に耐えるんだ。
 
　と思っていが、彼女は再び僕の足先のほうに戻り、つまらぬ揉みほぐしもどきを再開したのである。
 
　え？　なにこれ？　時が戻されたの？！
 

　動揺したが少し様子を見ることに。
 
　が、先ほどと同じような色気も技術も何もないレベルの低すぎる揉みほぐしもどきの二ターン目であることが分かった。
 
　彼女にしてみれば何かしら変えているのかもしれないが、体感は全く同じ。いや、その退屈さを知っているだけに二ターン目のほうが苦痛である。
 
　流石に耐えきれない。もう軽く30分以上は経過しているはずだ。このまま黙って地味すぎる施術を受け続けていても大丈夫なのか？ 行く末が不安すぎる。
 
 
　「オイルはやらないの？」
 
　「あ、もう少ししたらオイルやります」
 
　ほっとしたような、早くやれと怒りたいような、複雑な思い。彼女は言葉を続ける。
 
 
　「でも5,000円のオプションを付けないと、ずっとこんな感じです」
 
 
　・・・この店、ウンチ店の予感がする。
 
 
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　その後ようやくオイルに入り、超ソフトながら鼠径部リンパはあった。
 
　仰向けで頭部後方からのデコルテやお腹周りのケアでは、ぱふぱふはないが超低空飛行で目の保養にはなった。
 
　Tバックのお尻をこちらに向けながらの施術もあった。太ももを絡める時間もあった。
 
　が、それなりに楽しめた時間は正味10分程である。
 
　お値段、90分2万2,000円也（約5分の時短有り）。

 
　＊＊＊
 

　どこにでも転がっている話ではあると思う。
 
　研修や教育がテキトーな店で、容姿はいいけれどまだ現場に出るレベルではない若き嬢を指名してしまっただけの話なのであろう。おそらくあの言葉さえなければ、ここまで後味が悪くはなかったようにも思う。
 
　「5,000円のオプションを付けないと、ずっとこんな感じです」
 
　エステの右も左も分からぬような小娘が、こんなことをほざくなんて…。
 
　「高額オプション付けない客はもう来ないでいいから、塩サービスでいいよ」みたいなことを店舗責任者は嬢に言っているのだろうか。ここまで露骨な表現で伝えていなくとも、この嬢がそう受けとめる何かはあるのだろう。たぶん。
 
　この言葉を耳にしたとき、未経験嬢というフィルターを通し店舗責任者の悪辣な欲望が手に取るように分かった。やりきれない。
 
　この店、ウンチ店の予感しかしない。
 
 
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　プロフは盛られすぎながら容姿の良いこの嬢も、まともなお店がまともな研修をしたのなら輝くかもしれないのに。
 
　同じような価格あるいは少し安い90分18,000円～20,000円程度の、露出の激しい衣装や密着ありきのセクシー系メンズエステは首都圏に無数に存在する。
 
　むろんピンキリだがその中の人気店で働くセラピたちと比べると、今回の嬢の仕事量は三分の一にも満たないはず。
 
　この未経験嬢が万が一お店を変えることになった場合、あまりの仕事量の差に耐えられなくなることは想像に難くない（これまでヘンな店で働いていたことに気付き目を覚ましてくれるのなら嬉しいが）。
 
　磨かれぬ原石である彼女も、また被害者なのか・・・
 
　だがしかし。
 
　この未経験嬢も案外したたかな気がする。
 
　ツイッターでは施術に自信があるなぞと一丁前のことを言うし、盛り盛り店舗プロフに謙遜するどころか喜ぶという、軽すぎる言動がうかがえるのだ。
 
　まだ若く未熟であることを許される年齢ではあるとはいえ、「この親にしてこの子あり」と思わなくもない。この店にしてこの嬢あり。
 
　何はともあれ、この店はウンチ店の予感がする。
 

• 場所/店名：某店N●●●●●L(S区他)
• 時間/料金：90分15,000円+指名1,000円+ｵﾌﾟｼｮﾝ6,000円